きょうの枕草子

小説・エッセイ

きょうの枕草子

最果タヒ

中央公論新社 · 単行本

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内容紹介

随筆って、心が実在することを残す文学だと思うんですーー。 秋田魁新報「ハラカラ」連載企画が遂に単行本化! 詩人・最果タヒが、選り抜き訳し下ろした、あたらしい『枕草子』。 矢野恵司氏のイラスト22点を掲載! ーーーーーーーーーーー  春はあけぼの。  だんだん白くなっていく、空の山に触れているところが、すこし明るくなるころ、紫に染まった雲がほそく、左右に流れているから。  夏は夜。  月があれば当然だけれど、いない闇夜も蛍がたくさん飛んでいたり、たくさんでなくてもひとつ、ふたつ、って感じで、ほのかに光って飛んでいるから好き。  雨とか降るのも、結構好きだよ。  秋は夕暮れ。  夕日がぐっと、山のぎりぎりのところまで来て、からすが寝床へと帰っていくところ。みっつよっつ、ふたつ、みっつ、みたいにして急いで飛んでいくのがいいなぁ。さらに言うと雁が列を作って飛んでいるのが小さく見えるのとか、すごく好き。  日が完全に沈んで、そうして風の音がする、虫の声がする、もう、これはどうにも言葉にできないなぁ。  冬は早朝。  雪が積もっている日の朝は、もちろん、言わなくてもわかるよね、霜がとても白いのとかもいいね。でもそういうのがなくても、ものすごく寒い日に火を急いで起こして、炭火をあちこちに持って運ぶのもすごく冬の朝って感じする。ただ昼になって、ぬるくなってゆるんでいくと、火鉢の火も気づいたら白い灰まみれで、それはほんとやだな。 (本文 一の段より)

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