東京裁判と帝国陸海軍軍人

人文・思想・社会

東京裁判と帝国陸海軍軍人

中立悠紀

みすず書房 · 2026年5月

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内容紹介

1946年5月開廷の東京裁判は、戦犯を裁いただけの場ではない。本書が「スガモ思想」と呼ぶ、東京裁判を否定し昭和の戦争を擁護する思想が生まれた場でもあった。後に歴史問題を呼び、歴史修正主義にも導くこの思想はどのように生まれたのだろう。 始まりは、陸海軍省の廃止後、復員省を経てその残務を引き継いだ厚生省内の復員官署法務調査部門(法調)である。この組織は戦犯裁判対策を執り、戦犯とその家族を支援し、戦犯の靖国神社合祀に尽力するという重大な役割を担った。 さらに法調に所属した旧軍人は、岸信介ら元戦犯の政治家(スガモ組)と協調関係を結び、ともに戦犯釈放運動、戦犯に関する援護立法に深く関わった。東京裁判で唯一、被告全員を無罪であると主張したラダビノード・パル判事の判決書研究、パル日本招請にも尽力する。 スガモ思想は、旧軍人や政治家だけでなく、国民世論に力を得た面もある。占領解除後の1952年に盛り上がり、4000万筆を集めたと言われた戦犯釈放署名運動である。 本書は、歴史問題前夜を初めて実証研究の俎上に載せ、安易な断罪に陥らずに歴史に向き合う方向を示す。講和後の釈放運動がなければ、BC級のなかには今世紀初頭まで服役していた人がいたかもしれない。今とは違う歴史展開もあり得た。戦犯裁判は遠い昔の終わった歴史ではなく、その影響を、私たちは今も受け続けている。 序章 帝国陸海軍軍人と岸信介らスガモ組の思想と行動 第I部 帝国陸海軍軍人の「二つの戦争」 第一章 十五年戦争と陸海軍法務・捕虜部門 1931-45年 第二章 法調軍人の東京裁判対策 第三章 法調軍人と占領軍の暗闘ーーBC級戦犯裁判対策と戦争受刑者世話会結成 第II部 戦犯釈放運動 第四章 愛の運動戦犯受刑者助命減刑内還嘆願署名運動ーー補論戦犯釈放署名4000万説は本当か 第五章 戦犯釈放運動とメディアーー講和発効後の国民「世論」 第六章 戦犯釈放運動が外交政策に与えた影響 第III部 靖国神社への戦犯合祀 第七章 戦犯に関する援護立法 第八章 法調軍人による靖国神社への戦犯合祀ーーBC級戦犯合祀とA級戦犯の脱落 第九章 パル判決書研究とパル日本招請 第十章 A級戦犯合祀への道のり 第IV部 歴史問題史におけるスガモ思想 第十一章 日本人の戦争観とスガモ思想 第十二章 1980-90年代におけるスガモ思想の変容 終章 歴史問題の前夜 あとがき 註 図表・写真一覧 索引

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