内容紹介
鎮魂と告発のノンフィクション 1888年ロンドン。5人の女性たちが2か月のあいだに殺された。この「切り裂きジャック」と呼ばれる殺人鬼がいまなお人びとの関心をひく一方で、被害者の5人の女性たちにはこれまで130年以上ものあいだ一筋の光もあてられてこなかった。家庭内における暴力、社会的な差別、そして貧困や病から助かることのできない構造。5人の女性たちのこれまで誰もひもとこうともしなかった人生を1頁ずつ丁寧にめくるとき、不合理に満ちた過酷な社会状況のなかで生きた彼女たちの姿が浮かび上がる。連続殺人事件の被害者の人生をよみがえらせ、社会の暴力をつまびらかにする、気鋭による鬼気迫るノンフィクション。
レビュー
加害者+被害者=“切り裂きジャック”
結局のところ、切り裂きジャックには被害者たちが必要で、被害者たちが生きていた痕跡を遺すには加害者である切り裂きジャックが必要だった。著者がこの女性たちに焦点を当てたのもまた、彼女たちがホワイト・チャペルでのたれ死んだのではなく、切り裂きジャックという“偶像”に昇華された存在に殺されたからである。加害者と被害者が混ざり合い、絡み合った果ての存在が“切り裂きジャック”なのだ。あとはまぁ、この時代の若い女性の貞操の話がなかなか興味深かった。
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