引用
洗面所からドライヤーの音が聞こえてくる。 鼓膜を刺激する、強い風の音。 あの風見鶏たちは今、一体何に夢中になっているんだろう。 私は一瞬でも、あれくらい恥も外聞もなく洋楽や洋画に熱中していただろうか。 ずっと、周りの大人が喜ぶから、同級生と差別化できるからという理由で、海外志向の自分をどこかで演出していただけなんじゃないか。 冷たいソファの革と体温が、ひとつに溶けていく。 心から好きで、夢中になれて、それに触れているときは不安な気持ちにならないものがほしい。 ひとつでいい。 信じられるものがほしい。 たったひとつでいいのに。
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