内容紹介
沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰するーー。 あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側ーー世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。 「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」
レビュー
- 蟹クラブ
2026年6月6日
朝井リョウはなんでも知っている、XのTLが文学になっている、、と思って読んでいたけどそもそも朝井リョウはなんでそのTLの内容を知ってるの????!!?
登場人物の解像度が高かった
ネタバレを含むレビューです (タップで表示)
推し活にハマる人、ファンダム経済、中高年の孤独やコミュニティへの帰属欲といった、現代社会についての描写であったり、登場人物一人一人の思考、行動などの解像度がめちゃくちゃ高くて、共感できるところがたくさんあった。 ただ良くも悪くも文章の切れ味が鋭く、登場人物の立場としての言葉とは分かっていても、著者の思想を押し付けられているような感覚があった。 物語を通して正解や不正解を提示しているわけではないのに、何か観念を強制されているような感覚。 正欲はもう少し風刺的な作品として楽しめた点があったが、今作はよりリアル社会に踏み込んでいたからかもしれない。 こういう作品が本屋大賞を取ったのは面白いなと思った。
共感できるところが多かった。
みんなの引用・メモ
- 引用p.45
ふいに目に入った情報に心を持っていかれると、他のことが手につかなくなる。そうして一度気分が落ち込むと、芋づる式にネガティブな記憶を呼び起こしてしまって、ますます身動きが取れなくなる。まるでお腹の底に重い石を一つずつ投げ込まれていくような感じで、心身がどんどん沈んでいってしまう。
はるか2026年10月11日
- 引用p.38
洗面所からドライヤーの音が聞こえてくる。 鼓膜を刺激する、強い風の音。 あの風見鶏たちは今、一体何に夢中になっているんだろう。 私は一瞬でも、あれくらい恥も外聞もなく洋楽や洋画に熱中していただろうか。 ずっと、周りの大人が喜ぶから、同級生と差別化できるからという理由で、海外志向の自分をどこかで演出していただけなんじゃないか。 冷たいソファの革と体温が、ひとつに溶けていく。 心から好きで、夢中になれて、それに触れているときは不安な気持ちにならないものがほしい。 ひとつでいい。 信じられるものがほしい。 たったひとつでいいのに。
はるか2026年10月11日