内容紹介
「あとで!」乱暴で無愛想でそっけなくて冷淡なその響きは、オリヴァーについて真っ先に思い出す言葉だ。十七歳のあの夏、エリオがオリヴァーと過ごした日々は、鮮やかな記憶として今も消えずに残っている。毎年、夏休みになるとエリオの家に滞在する若い研究者のひとりでしかなかった彼の最初の印象は、好きになれるかもしれないし、大嫌いになるかもしれない男だった。しかし、すぐにエリオは彼から目が離せなくなり、話ができれば幸せに、よそよそしい態度をとられれば傷つくようになってー。切なくも甘いひと夏の恋を描いた青春小説。本年度アカデミー賞脚色賞受賞、作品賞、主演男優賞・歌曲賞ノミネート、映画化作品の原作!
レビュー
パラレル
実らなかったからこそ心に刻まれる種類のものだと思った。実らないから、実った姿がいつでも瑞々しく思い出される。実らないから、腐り落ちることもない。 映画を先に観ていて、あのラストシーンのシャラメのロングショットに心が震えたけれど、原作では年月を経た二人が描かれる。そして、これからも彼らはあの時間を美しいものとして懐かしくも苦く思い続けるのだ。スノードームの雪のように永遠に煌めきつつも、触れることは叶わないような、でもその世界の中では現実で、だからパラレル。現代よりゆっくり時間が流れているように感じたのも印象に残った。
みんなの引用・メモ
- 引用p.311
抽象的に考えたときにはなんとも思わない喪失も、それを現実のものとして目の前に突きつけられるのはつらい。失ったもの、二度と欲しくならないものについて考えるのをやめて長い月日がたってからでも、なつかしく思い出したときは胸が痛むのと同じように。
流之助2026年4月26日